分析!!ライトノベル~ラノベ旧刊から新刊まで~

化物語(上)

化物語(上) (講談社BOX)
化物語(上) (講談社BOX)西尾 維新 VOFAN

講談社 2006-11-01
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あらすじ

阿良々木暦を目がけて空から降ってきた女の子・戦場ヶ原ひたぎには、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかった――!?台湾から現れた新人イラストレーター、“光の魔術師”ことVOFANと新たにコンビを組み、あの西尾維新が満を持して放つ、これぞ現代の怪異!怪異!怪異!青春に、おかしなことはつきものだ!(『化物語(上)』より)

感想

物語シリーズ第一巻の上巻です。「ひたぎクラブ」「まよいマイマイ」「するがモンキー」の三話が収録されています。どれも噂に違わぬ素晴らしさでした。

この作品は基本的に、作者があとがきで記している通り、「馬鹿な掛け合いに満ちた楽しげな小説」です。そしてその方針で書かれた小説としての完成度は、まず最高レベルだと言って差支えないと思います。読んでいて笑いが止まりません。さらに凄いことは、そのギャグが知的な物ばかりであることです。例えば、文字を少しいじるだけで意味が大きく変わったり、文字上は同義の言い換えで、ニュアンスが物凄く変化したり。完全に言葉の力を使いこなしています。

そして、一応この小説の主軸は「怪異」。その内容のまとまりも物凄いです。最初から最後まで、話の流れとしての無駄な部分がありません。一見、前述の様な「馬鹿な掛け合い」のシーンでも、後のシリアスな場面で生きてくるようなタネが仕込まれています。後から、「そういうことだったのか」と思う箇所がいくつも出てきます。前半を読んでいるうちに膨らんできた疑問が最後で一気に処理される流れです。不可解なことには必ず理由が付いてきます。

掛け合いが楽しい反面、内容は基本的にかわいそうな話ばかりです。しかし、暗すぎるわけでもなく、何よりヒロインたちが前向きなのが、読者としても救われます。

登場人物のキャラも素晴らしいものばかりです。ツンデレならぬツンドラ・戦場ヶ原ひたぎ。利発そうに見えてやはりこ子供っぽい小学生・八九寺真宵。アレなスポーツ少女・神原駿河。おまけに軽い乗りなのに常に正論の、見透かしたおっさん・忍野メメ、等々。

もともと明らかにバトル物ではありませんが、「するがモンキー」のみ最後にバトルシーンが登場します。そこで描写されているのは、主にダメージの状況と策略で、やはり人物の動作というよりはむしろ人物の内面に重点を置いている思いました。

読後に残る物も多く、色々と深い話でした。ベテランの実力というものを感じた一冊でした。

分析

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