分析!!ライトノベル~ラノベ旧刊から新刊まで~

RAIL WARS! ―日本國有鉄道公安隊―

RAIL WARS!―日本國有鉄道公安隊 (創芸社クリア文庫)
RAIL WARS!―日本國有鉄道公安隊 (創芸社クリア文庫)豊田 巧 バーニア600

創芸社 2012-01
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あらすじ

「電車内で痴漢が逃走したらどうする?」「もちろん射殺する!」桜井あおいは即答し、俺は頭を抱えた。超巨大優良企業・國鉄に就職し、安定した将来を夢見る平凡な高校生、高山直人。そんな俺が研修で配属されたのは、男嫌いの桜井をはじめヤバい奴だらけの「鉄道公安隊」だった!しかも、國鉄の分割民営化を企む過激派「RJ」まで暗躍し……どうなる?俺の人生設計!コクテツが分割民営化されなかったもう一つの日本を舞台に、夢の鉄道パラダイス・エンタテイメント!定刻通りに出発進行!?(『RAIL WARS! ―日本國有鉄道公安隊―』より)

感想

「僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない」の著者、豊田巧氏によるお得意の鉄道モノです。世界観は、国鉄が民営化されなかったらどうなっていたか?というものです。この作品は、「発想の勝利」的な部分も大きいように思いました。

主人公の高山直人は國鉄に就職を希望する高校生ですが、その理由の一つが親方日の丸の下で安定した生活を送るためと、何とも消極的なもので、モットーは「後ろ向きに全力で頑張る」。行動にもだらしなさが滲み出ていて、最初はなかなか好きになれませんでした。

しかし、彼は一月の過酷な研修を経て大きく変わります。國鉄で安泰な人生を送るという希望は変わらないものの、「強く・正しく・親切に」のモットーを身に付けた彼は、人としては見違えるようにしっかりとし、配属先の「警四」でも、目の前の事件に全力で対処します。こうなると私も主人公を好きになることができ、以降心置きなく話を楽しむことができました。

他、メインの登場人物は美人で身体能力に長けるが、高圧的で男嫌いな桜井あおい。かわいくて胸が大きく、記憶力抜群の小海はるか。育ちざかりの体育会系でいいやつなのだが勉強は残念な岩泉翔。…なんか色々と既視感を感じるのですが、皆しっかりと印象に残るキャラなのでいいと思います。

メインの事件については、それなりに作り込まれているように感じました。しっかりと読者の裏をかいて、予想不可能な因子もしっかり飛び込んで来ます。そして最後の最後まで形勢が何度もひっくり返ったりと、読んでいて飽きない話でした。

しかし、公安隊の話としては、やや動作の描写に難があるように思います。もう少し細かく、気の利いた表現が欲しい所です。

そして誤字その他がかなり多かったです。せっかくの作品の価値を下げてしまわないように、入念な確認をして頂きたいです。

挿絵(バーニア600氏)についてですが、非常に素晴らしいです。細かく言うと、やたら鉄道の絵が美しいです。明らかに人物よりも鉄道の方に力を込めてます(笑)。しかし、それでもなお人物の絵もいい出来です。鉄道は写実的に、人物は綺麗にえがかれています。この上手さは今まで読んだラノベではトップクラスで、もしかしたら一番かもしれません。個人的に、今回の挿絵の中で一番のお気に入りは、278、279ページです。人物はだいぶラフに描かれていますが、圧倒的迫力の鉄道と、事態の動く一瞬を全て詰め込んだかのような絵がとても大好きです。

分析

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